東京大学日本語教育センター|Center for Japanese Language Education,the University of Tokyo

日本語教育関係の方へのご案内

 

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• 非常勤講師公募

東京大学日本語教育センターでは、留学生に対する日本語教育を担当する非常勤講師を、年2回、公募によって求めています。

 

[2016/7/15]

 

2017年度第1回の非常勤講師公募を開始しました。

応募は、8月17日(水)必着[持参不可]で締め切ります。

明日の日本語教育を一緒に作ってくださる方々のご応募を お待ちしております。

 

 

 

 

         

 

 

 

 
     
         

 

 

教案課題の趣旨説明 ーいわゆる伝聞の「そうだ」ー

 

 

 

日本語の初級用教材には、しばしば次のような文が出てきます。

 

(1) クララさんは、子どものとき、フランスに住んでいたそうです。
(2) 天気予報によると、あしたは寒くなるそうです。
               (いずれも「みんなの日本語Ⅱ」第47課より)

 

これらは、いわゆる伝聞の「そうだ」を用いた例で、「(普通形)+そうだ」の形をとり、「他者から聞いた話を伝えるときの表現」などと説明される場合が多いものです。

 

 

 

■「そうだ」はいつ使う?

 

次の文をご覧ください。これは、初対面の会話例です。

 

(3) 田中:山田さん。ご出身は、北海道だそうですね。
          山田:ええ、そうなんです。  

 

「他者から伝え聞いた情報であること」が、文末に「そうだ」を付加することによって示されており、この部分を欠いて「ご出身は、北海道ですね」などとしてしまうと、不躾な印象を与えてしまいかねません。


このように「伝え聞き」であることを表示することの有無は、それ自体がコミュニケーション上の重要な情報のひとつとなり得ます。

 

しかし、日本語には、「そうだ」のほかにも、「~と言っていた」「~と聞いた」「~ということだ」などの類似表現が多数存在します。この点を、次の会話で考えてみましょう。

 

(4) A:あ、Bさん、きのうパーティでCさんに会いましたよ。
    B:ああ、そうですか。
    A:Cさんが、Bさんによろしく伝えてほしい と言っていましたよ。

 

(5) 客 :すみません。こちらのお店に○○(=商品名)がある と聞いたんですが。
    店員:あ、はい。ございます。少々お待ちください。

 

これらは、いずれも「他者から聞いた話を伝えている」にもかかわらず、(4)の「と言っていました」、(5)の「と聞いたんです」を、それぞれ「そうだ」を使った表現に置き換えると、自然でなくなってしまう例です。こうした例から、私たちは「そうだ」を実際に使うのはどんなときかという問題に、あらためて向き合う必要があることに気づかされます。

 

 

 

■ 情報源 =「~によると」でいい?

 

また、多くの教科書では、「そうだ」とともに、「情報源」を表す「~によると」が提出されます。

 

(6) 天気予報によると、あしたは寒くなるそうです。(=上記(2)再掲)

(7) 田中さんの話によると、あのレストランはおいしいそうです。

 

しかし、「情報源」が、いつも「~によると」を用いて示せるというわけでないことが、次に示す、実際の学習者の発話に基づいた例でわかります。

 

(8) A:明日の飲み会に、田中さんも誘ってくださいね。
    B:誘いました。でも、田中さんの話によると(×)、アルバイトで忙しいそうです。


このように、「~によると」の使用条件も、単に「情報源」ととらえるだけでなく、実際にはどのようなときに使われるか、具体的に検討することが必要になるでしょう。

 

 

 

■ 伝聞の「そうだ」は「耳の情報」?

 

当該文型に類似するものとして、様態の「(ます形)+ そうだ」があり、両者は、一般に「耳の情報」/「目の情報」などとして区別されることが多いと思われます。しかし、次のような例を見ると、この分類基準が必ずしも正しいとは言えないことがわかります。

 

(9) 来客:わたくし、こういう者ですが(名刺を差し出して)、
      部長さんにお目にかかれないでしょうか。
    秘書:はい・・・。少々お待ちください。
           ******
    秘書:あの、部長。お客さまです。ABC商事の営業部の方だそうです。

 

この例では、「耳の情報」すなわち「音声を介した伝達」が行われていないにもかかわらず、「そうだ」が使用されています。

 

この例から、伝聞「そうだ」/様態「そうだ」の両者の区別について、もっと相応しくてわかりやすいキーワードが必要になることが理解できます。

 

 

このように、この文型の指導には、様々な問題が隠れているのが感じられます。
以上に挙げた点をヒントに、この文型が学習者の言語生活でどのように使われうるか、そして、それをどのような方法で学習者に伝えることができるのか、どうぞ自由な視点でお考えいただき、それを実際の授業案として具体化していただければと思います。

 

 

わたしたちは、学習者に提示するすべての文型について、このような考察を行いながら、日々の授業に取り組んでいきたいと考えており、それに共感してくださる方々と、協働的、かつ創造的な教育活動を実現していきたいと願っています。
意欲的な方々のご応募を心よりお待ちしています。

 

 

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