東京大学日本語教育センター|Center for Japanese Language Education,the University of Tokyo

センターの日本語教育の理念と特徴

センターでは、東京大学とその留学生にふさわしい日本語教育を提供することをめざしています。その理念と特徴について紹介します。

教育内容上の理念と特徴

私たちは、〈東京大学とその留学生にふさわしい日本語教育〉の提供をめざしています。

具体的には

  1. 〈東大の留学生のニーズ〉
    東大の留学生が研究生活・大学生活・社会生活をする上で、どのような日本語能力が必要か
  2. 〈東大の留学生の性格〉
    知的・論理的な習得を好む東大の留学生に、どうしたら、必要な〈知識〉と〈運用力〉を適切かつ効果的に身につけてもらうことができるか
  3. 〈効率とゴール〉:そのような日本語教育を、限られた時間や条件の中で、できるだけ効率よく高い水準まで学習者を導くように達成していくには、どうすればよいか

ということを十分に考えて、コースの設計・コーディネーションをしています。
もう少し詳しく述べましょう。

センターの日本語教育を受ける留学生は、国籍も専門も日本語のレベルもさまざまですが、共通点は、東大の留学生であること、それも、大学院レベルの研究生活を送っている研究留学生が中心だということです。そのため、学生の1.〈ニーズ〉の点でも、また2.〈性格〉の点でも無視できない特徴があり、これへの対応が必要となります。

1. 〈東大の留学生のニーズ〉

 1. についていえば、たとえば、東大の留学生(特に研究留学生)は〈研究生活のさまざまな場(研究室・セミナー・学会など)で必要な日本語〉の習得を求めています。その具体的な内容やレベルは専門分野や個々の学生ごとに違いますが、〈研究生活〉の場で活きる日本語の習得を求めている点は共通です。

 この点を踏まえて、私たちは、このような留学生を支援するのにふさわしい日本語教育を心がけています。つまり、〈日本語を「研究生活のツール」にしていけるようになること〉を一つの目標に据え、たえずこれを意識した教育を-上級レベルについてはもちろん、初級レベルの教育についても-行っています。

 この点は中上級の課題だろうと思われるかもしれませんが、〈実は、すでに初級段階から、工夫次第で、こうした面をいろいろと織り込んだ日本語教育を提供することができるはずだ〉という思想を私たちは持ち、それを試みているのです。

 たとえば、初級の読み物というと、一般には、ただ簡単な内容の理解を目的とするだけの教材が与えられるものですが、私たちは、すでに初級の段階から、内容自体は平易であっても、文章構造の法則性(接続関係、話題の続き方・切れ方〈専門用語でいうと「主題のスコープ」〉など)を意識させるような教材を工夫し、読解指導を試みています。

 また、初級のクラス(1週のコマ数の多いクラス)の最終段階の活動として、インタビュー調査とその結果発表、あるいは出身国の文化紹介を、いずれも日本語で行う練習をしています。初級段階のうちからこのようなプレゼンテーションを日本語で行うことは、将来、本物の研究発表を日本語で行うことにつながる貴重な経験になるはずです。

→ 初級の教育活動の詳細は こちら
→ プレゼンテーションの様子は こちら

2. 〈東大の留学生の性格〉

 また、2. についていえば、東大の留学生の〈性格〉として、日本語を学ぶ上でも、知的・論理的な理解を求める傾向がかなり強いことがあげられます。

 そのため、私たちは、教授法においても演繹的・体系的・論理的であることを何よりも大切にしたアプローチをとっています。

たとえば、ある一項目を教える場合でも、体系的な全体像の中でその位置を示しながら教える;規則性などを教える場合、できるだけ演繹的・論理的に示す;帰納的に導く場合には、学習者に発見を促す喜びを与える工夫や、最終的に知識を整理し直して確認するプロセスを欠かさない;というようなことです。(一般的な日本語教育では、どんなことを教えるにも、まず多くの例をあげて、そこから帰納的に日本語の知識を身につけさせ、あわせて機械的な練習を繰り返して運用力を身につけさせていく方法が主流ですが、このような教授法ばかりでは、東大の留学生は決して満足しないことが、これまでの経験からわかっています。)

 もちろん、私たちの日本語教育は、ただ日本語の〈知識〉を身につけさせることをめざしているわけではありません。日本語をツールとして自在に使えるような〈運用力〉をつけることが何よりも大切だと考えています。このためには十分な練習が必要です。しかし、その練習の方法や内容は、やはり東大の留学生の〈知的関心〉にかなうものでなければなりません。機械的な練習を全く避けて通ることはできませんが、たとえば、あまりにも子どもっぽい練習は、好まれません。実は、特に初級の日本語教育は、一般に語彙や文法の制約から、その教材や練習の内容が、ややもすると、まるで子ども向きのようなものになってしまいがちなのですが、こうしたことは極力避け、私たちの留学生の性格や関心に合った方法をとらなければなりません。また、会話教育についても、教科書の会話例を丸暗記させるといった方法ではなく、会話の運び方のストラテジーを意識させることで会話の運用力を高める教育方法を、私たちはとっています。

 このように、〈知識〉の獲得の面でも、さらに重要な〈運用力〉の養成・定着の上でも、東大の留学生の知的な〈性格〉に合わせた日本語教育を行っています。

3. 〈効率とゴール〉

 しかも、3.〈できるだけ効率よく、高いレベルまで〉という要請にも応えるのは当然です。

上記のすべてを満たす日本語教育をめざすということは、実はなかなか大変なことで、日本語そのものについての研究や、教育方法・学習心理学などに関するさまざまな研究が必要です。私たちは、これらをもとに、日々、教育の改善に努力しています。

 そして、このような、〈知的〉な理解と、実際の〈運用力〉をともに重視する〈東京大学の日本語教育〉をさらに追究していく試みの中から、日本語教育全体を益する面も、少なからず出てくるはずだと信じています。その意味で、私たちは、直接の仕事は留学生に日本語を教えることですが、日本語教育の研究機関としての責任も重いと考えています。

 以上のような意味で、教育と研究をともに重視し、〈東京大学の留学生にふさわしい〉また〈東京大学にふさわしい〉日本語教育をめざしているのです。

→留学生の研究活動を支援するための日本語教育については こちら

東京大学の各日本語教室と比べての制度上その他の特徴

なお、東京大学には、日本語教育センターとは別に、それぞれの研究科あるいは専攻ごとに、日本語教室を開設しているところもあります。これら各教室は、一般的には、その研究科や専攻の留学生だけを対象に細やかな教育を実施していますが、これらの教室と比較して、日本語教育センターの日本語教育は、制度上その他の点で、次のような特色をもっています。

  1. 全学的な組織として、広く、また多数の受講者を受け入れています。: 日本語教育センターは、各研究科・学部からニュートラルな全学的な組織で、駒場・柏も含めて、広く全学の留学生を受け入れています。コースもさまざまなコースを用意し、コースによっては、留学生以外の外国人研究者や、留学生・研究員の配偶者にも門戸を開いています。受講者も年間のべ600~700人にのぼります。
  2. 国費の研究留学生(大使館推薦)に対する日本語教育を、文部科学省から依頼されて行っています。: センターが設立された当初の目的は、そもそも、この教育を担当することでした。その後、センターは学内各方面の要望を受けて、上記1のように対象を広げてきていますが、国費の研究留学生を中心とした〈集中日本語コース〉を効果的に実施することは、今でもセンターの重要な仕事の一つです。
  3. 専任の教員(教授・准教授・専任講師)として、日本語教育およびその研究の専門家が在任しています。
  4. 非常勤講師は、公募によって広く適切な人材を求めています。

このような特色をもつ日本語教育センターの全学的な日本語教育と、学内各セクションでそれぞれの実情に応じて個別に行われている日本語教育とは、おのずから性格や役割の違うところがありますが、どちらも必要なもので、適切に役割分担を果たしているという関係にあります。

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