東京大学日本語教育センター|Center for Japanese Language Education,the University of Tokyo

センターの特色ある教育活動・教育のための研究活動

センターで行っている教育活動・研究活動の中でも、特に特色ある面を取り上げ、紹介します。

 

 

 

初級の教育活動

日本語教育センターには2つのタイプの初級クラスが開設されています(→詳しくは〈一般日本語コース〉〈集中日本語コース〉の比較 )。その中でも、集中日本語コースのクラス1・2は、1週間あたりのコマ数の多いハードなコースです。期間は4か月と限られていますが、その中で、日本語の「知識の獲得」と「運用力の向上」を最大限に図るため、教育内容・教育方法の開発を行いつつ運営しています。 ここでは、そんな初級クラスでの教育活動のうち、とくに特色のある部分を取り上げてご紹介します。

特色1:基本方針

日本語をまったく、あるいは、ほとんど勉強せずに日本に来た留学生にとっての関心は、まず、早く日本語で日本人とコミュニケーションできるようになりたい、あるいは、日本語で書かれたものが読めるようになりたいというような〈実用的〉なものであることは確かでしょう。しかし、その一方で、さまざまな外国語の学習経験のある人は、日本語がどういう言語か、自分の知っている言語とどのように同じでどのように違うのかを体系的に知りたいという〈知的関心〉も強いため、これに応えていくことも私たちの重要な任務だと考えています。

私たちがめざすのは、語学学習を「刺激―反応」の図式に押し込めない「考える学び」としての学習です。そして、この方向を堅持しつつ実際の運用力を高めるために、以下のような豊富な授業内容を提供しています

特色2:授業内容

次の表は、集中日本語コース クラス1・2の1週間の授業内容の例です(注:クラス・学期により、開設曜日や内容などが若干異なります)

1週間の授業内容(例)
  1 2 3
文型 会話/作文  
文型 文型発展練習 復習テスト+ α
文型 会話  
文型 会話 漢字 + 読解
文型 語彙 + 聴解  

1限の文型コマでは、日本語の基本的な構造と意味の理解、文レベルの練習を行います。これに続く2~3限の各種技能コマは、それを実際にどう役立てることができるか、「会話」「作文」「聴解」「読解」などの具体的な文脈の中で確認したり、実践したりする場です。
こうしたコマ同士の連携によって、学習者の知識と運用力が、図のように有機的なつながりを持って発展していくようにカリキュラムは設計されています。またその際、学習者にとっては、「読み物」や「聴解の会話」が実際の運用のモデルとなる点も考慮して、初級の語学学習だからといって「不自然な日本語」を与えてよしとするのでなく、できるだけ「自然な日本語」をインプットするよう心がけています。

各コマの有機的な連携

図 各コマの有機的な連携

特色3:教材開発

このような授業を実践していくためには、それに見合うだけの教材も必要となります。一般の教科書を使用しつつも(→詳しくは 集中日本語コース・学術日本語コース 教科書一覧 参照)、その不足を補うべく、独自の教材開発を行っています。たとえば、文型をコンパクトに整理・説明した教材Basic Structures(BS)、初期の段階から談話構造に目を向けるよう設計された読解教材、その他、未習場面への対応力を重視した会話教材などです。
いずれについても、日々の授業でもう実際に使用していますが、さらによりよい教材をめざし、学習者の意見も取り入れながら、たえず改訂・追加作成を行っているところです。

このページのトップへ

 

 

留学生の研究活動を支援するための日本語教育

日常生活のコミュニケーションは問題なくできるし、研究面でもしっかりした内容を持っているという留学生でも、日本語を使って論文を書いたり、学会やセミナーで研究発表をしたりするのは、なかなか難しいことのようです。この事情は、日本人の研究者が外国語で論文を書いたり発表したりする場合の難しさと同様でしょう。アカデミック・イングリッシュというものがあるのと同じように、アカデミック・ジャパニーズの教育・トレーニングが必要です。ごく基本的なところに限っても、たとえば、定義の述べ方、分類の示し方、引用の仕方、データの提示の方法などについて、日本語そのものの問題として(=専門的な内容についてではなく)おさえるべき点がいろいろあります。

そこで、〈研究留学生を支援するための日本語教育〉を大事にしている私たちとしては、このようなトレーニングを提供していく必要があると考え、それをめざすクラスとして「学術日本語コース:研究活動のための日本語」を設置しています。トレーニングの具体的な方法については、まだ今後の研究課題も多くありますが、東大の研究留学生を益する新しい種類の日本語教育を軌道に乗せていくことの意義は大きいと考えています。

授業では、毎回、シラバスに沿ってライティングの課題を課し、次の授業で、各自が書いてきたものをもとに、学術的な文章の構成・論理展開・表現などのあり方についてクラス全体で検討しています。それぞれの専門に特化した内容にまでは踏み込みませんが、分野を問わず、日本語の学術的な文章に共通する事柄について密度の濃い学習を進めており、毎期、さまざまな専門分野の留学生たちが熱心に受講しています。

このページのトップへ

 

 

教育のための研究活動

東京大学日本語教育センターでは、〈日々、充実した日本語の授業を提供し、学習者の日本語の理解と運用力を高める〉という目標とともに、〈そのための研究を、日頃の教育活動を通じて行う〉という目標を、自らに課しています。得られた研究成果は、学会・研究会などで積極的に発表し、日本語教育界全体に発信・提案しています。

特に最近の傾向として、個人研究よりも共同研究、特に、専任・特任スタッフと非常勤スタッフとが、日頃の地道な教育活動・教育成果をもとにディスカッションと分析を重ねて研究に昇華させるタイプのものが増えてきています。その内容は、会話・ライティング・読解・漢字・文法など、さまざまな領域に及び、レベル的にも、初級から上級までに渡ります。

最近の共同研究の一部をご紹介します。

  • 「話し言葉の音声特徴を考慮した初級シラバス再構築の試み―「んですけど」の提出順序をめぐって―」

  • 「初級後期段階から始める、漢字圏学習者の漢字音「再学習」支援の試み」

  • 「iPadによる語彙学習教材の多様な学びの可能性」

  • 「ペアワークを中心とした会話練習におけるインターアクション観察」

  • 「認知プロセスを考慮した補助動詞の文型指導-「てある」「ておく」「てくる」「てもらう」を例として-」

  • 「様態の「そう」の指導法改善」

  • 「「させていただきたいんですが」における「テモラウ」「使役形」の「行為者転換機能」と、それを基軸にしたシラバスの提案―日本語教育の実践者の視点から―」

  • 「正しくわかりやすい情報伝達を目指して―「メッセンジャータスク」の実践から―」

  • 「日本語学習者と構築する『Web世界地図』-メディアを利用した学習者の情報発信の試み―」

  • 「音声を利用した初中級日本語学習者向けデジタル漢字教材の開発」

  • 「ミニマル会話から拡げる会話教育」
  • 「カジュアル会話、なぜ教室で扱うのか、どう教えるか」
  • 「論文作成を目指す留学生のための上級アカデミックライティング」
  • 「初級段階から始める「複雑な文構造」に対応する読解力の養成」
  • 「現場から発信する「もうひとつの日本語教育文法」」 PDF版

 

 

 

このページのトップへ